矢 野 純 T O D A Y 瓦 版

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2013年10月9日「玄関で遭難」

  台風の晩、居間にバッグを置いて、外に出て玄関を閉めた。

  自動ロック機能が働いて鍵が掛かった。

  家に入れなくなった。


  パニックになり、頭を抱えて家の周りを2周した。


  家に入る方法を考えたが思いつかない。

  10分間位考えて、

  妻の職場へ行って、鍵を借りてこようと思った。

  この日、妻は夜勤で家に居なかったのだ。


  車のドアが開かない。鍵は居間にある。

  自転車は空気が抜けている。もちろん鍵は居間にある。

  電話が無い。携帯電話も居間にある。

  公衆電話のテレホンカードも無い、10円玉も無い、

  それに、妻の職場の電話番号を覚えていない。


  今 手元にあるのは、

  パンツとランニング、Tシャツとズボン、靴下と靴とメガネのみだ。


  妻の職場はそう遠くなく、片道1時間位歩けば着く見込みだ。

  焦る気持ちで最初の20mだけ走って疲れて歩いた。


  台風は幸いなことに、宮崎県からは遠い場所を進んでいた。

  お陰で風は強くなく、風上に向かって傾いて歩けば良い具合に歩けた。

  横風で耳の穴に雨水が入る。手で耳を覆う。


  横断歩道を渡っていると、私の前で車が急に停まる。

  こんな台風の晩に歩行者が居るはずもない。

  怪しいものでは御座いませんが、

  残念ながら身元を証明できるものが今は何もない。


  幹線道路を走るトレーラーが勢いよく泥水を跳ねる。頭から被った。

  しばらくして滝のような雨が降った。ありがたい。


  まるでドラマのシーンのようにずぶ濡れだったが、

  特にドラマらしい展開がある訳でもなく、ひたすら歩くのみだった。


  翌日、妻が「タクシーで来れば良かったのに」と言っていた。

  もちろんタクシーを呼ぶための電話番号を覚えていないし、10円玉も無かった。

  歩くほか無かった。

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