矢 野 純 T O D A Y 瓦 版

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2014年9月6日「忘れられない言葉」


    「矢野さんは、データベースのキーは文字と数値、どちらにするのが良いと思いますか。」


  先輩が 穏やかな笑顔で私に質問しました。


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  新入社員だった頃に、

  データベースを扱うソフトを改造することになりました。

  今から20年位前のことです。


  私はそれまで「データベース」を扱ったことが一度もありませんでした。

  キーはおろか デの字すら分かりません。

  幸い、別の部署に データベースの(キレキレの)専門家の若い先輩が居ました。

  その方から、データベースのイロハを教えてもらう事になりました。


  質問の言葉は、そのキレッキレの専門家の先生…ではなくて、

  先生の上司をなさっていた先輩の言葉です。


  なにしろ私は デの字も何にも分かりませんから、

  素直に「分かりません」と答えました。


  すると先輩は、

    「この事には諸説 議論がありますが、私はこう思います。その理由は…」

  と、簡潔に 先輩の考える、それぞれの長所と短所を教えてくれました。


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  あの時 先輩が私に質問したことには、実は答えがありません。


  どちらが良いかについては、今もなお 議論が尽きません。

  どちらか一方が絶対的に良いということはなくて、

    「時と場合によって 両者を使い分ける」

  のが正解なのだと、今は分かります。


  先輩は私に、そのような正解を答えることを期待して質問したのではないと思います。


  その上で先輩は あえて一方を選んでみせて その長所と短所を話してくれました。

  データベースを知らないペーペーの新人の私に

    「そのような視点を持って考えること」

  を遠まわしに教えようとしたのだと思います。


  それ以来、データベースを設計するときには、

  キーは文字と数値のどちらが良いのか、

  それとも その2つとも違う別の方法が良いのかをいつも考えます。


  いつも考えることで、

  それぞれの方法の長所と短所、

  時と場合に合わせた使い分けも自然と身についていきました。


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  先輩と交わした言葉は、後にも先にもこの一言だけでした。

  それ以来、職場も違うので お目にかかった事もありません。


  会社の電子メールで、社内の「お知らせ」が届くことがあるんです。


  そのようなメールは、まず発信者から 各組織のリーダーへ送られて、

  それが部下に転送されて、そのまた部下へ転送されて、転送されて、

  末端の平社員である私の所まで届きます。


  転送を繰り返されたメールの一番下に、

  もともと発信者が各組織のリーダーへ宛てて送った文章が載っています。


  宛先の所に、各組織のリーダーの名前が沢山並んでいるのですが、

  その中に、先輩の名前がありました。


  (我を忘れて感情的に)「アーッ!」と思って、

  嬉しくて仕方ありませんでした。

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