矢 野 純 T O D A Y 瓦 版

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2014年9月30日「返り討ち」

  博多駅の近くの食堂に行きました。


  70cm位ある長い鉄の串に 肉の塊が沢山刺してあります。

  焼きあがった串を店員さんが持って

  お客さんのテーブルを回って、肉の塊を配ってくれます。


  断るまで わんこそばのようにソラから肉の塊が降り続ける、

  夢のようなバーベキュー食べ放題のお店です。


  妻と席に着くと、

  左隣のテーブルには、初老の紳士が一人おりました。

  私たちが肉を食べ始めてしばらくした頃に、

  こんどは右隣のテーブルに、男女2人組が座りました。


  右隣のテーブルの方々は、初老の男性と中年の女性で、

  聞こえてくる会話から、夫婦ではないようでした。


  その右隣の女性が、

    こんな所に一人で食べに来るなんて 考えられなーい!

  と大声で言いました。


  左隣の紳士は 無言で食べていました。

  しばらくして、左隣の紳士は帰っていきました。


  次第に私も降り注ぐ肉の塊についていけなくなり、

  もう指一本でマーライオンになれそうな腹になって、

  ついに店員さんに肉を断りました。


  すると右隣の女性が、

    肉を沢山食べるヒトほど 人生を謳歌しているんですって!

  と言いました。


  それも立て続けに3回も

  「人生を謳歌」人生を謳歌と 繰り返し言っていました。


  私は右隣の方々よりも先に来ていて、

  もう食べ過ぎて顔色が悪くなるほど肉の塊を満喫したために肉を断ったのですが、

  私が断った途端、3回も謳歌謳歌と うるさく言っていました。


  どうも右隣の女性は、

    食堂で たまたま隣に座っただけの見ず知らずの他人の男性を不当にオトシめることで、

    相対的に 相手の男性の価値が あたかも高いかのように錯覚させる話をすることで、

  男性の御機嫌を取っているようでした。


  それを聞いて私は、

    そういえば去年買ったケルヒャーよ、ケルヒャー。高圧洗浄の。

    あれよ、家の庭の物置に押し込んだまま 箱を開けちょらんとよ。

    玄関のスロープに藻が生えちょるかいね。

    便利なっちゃろうけど、でも箱を開けて出すのが面倒でよ。

    それと家を建てたときに買ったホームベーカリー、

    あれは 箱からは出して台所には置いた、でもまだ一度も使っちょらん。

    (今回買う)ミキサーは、一回は使わにゃいかんな!

  と言って妻と笑いました。


  家の庭の物置に モノをしまうことは、

  私の暮らしているような田舎町では ごく普通のことで、

  珍しくもなんともありません。

  しかし都会のマンションに住むヒトには出来ないことだろうと思います。


  あえて宮崎弁丸出しで話したのは、

  田舎町の山奥に行くと時々、信じられないほど大きな家が建っていて、

  そのような家の広間には、電器店では展示さえないような超大型テレビが鎮座している、

  都会の方とは別の意味で人生を謳歌している方がいる事を思い出して、

  右隣のテーブルの女性に、

  隣は田舎の豪族らしいと 勘違いさせるような話を わざとしてみせました。


  私自身は 人生を謳歌しているか?と聞かれると

  首を傾げてしまいます。少なくともハイとは言えませんが、

  魚や野菜を沢山食べている方が 肉食の方に比べて

  人生を謳歌していないという事は 決してありません。

  肉食が人生を謳歌など、まったく根拠がありません。


  私だけならまだしも 左隣の紳士をも不当にオトシめる

  攻撃的な右隣の女性に対して、

  今の私に出来る 精一杯の遠まわしな反撃をしました。


  私の「ケルヒャー発言」の後、

  右隣の女性は静かになりました。

  相手の男性の、小さなため息が一つ聞こえて来ました。


  私たち夫婦は食事を終えてレジへ向かいました。

  すると店員さんが、何かに気が付いて慌てて厨房へ行きました。


  食べログに「記念日デザートプレート」サービスクーポンが載っていました。


  気さくなお店なのか

    「記念日でも、記念日じゃなくても利用OK!」

  と書いてあるのを妻が見て、

  予約したときに、デザートプレートを頼んでいたのです。


  今、プレートを出そうと思っていたところだと店員さん。

  席に戻ってデザートプレートを食べることにしました。


  その 通常利用では出てこないデザートプレートについて、

  右隣の女性は一言も触れようとせず、

  私たちがデザートプレートを食べ終わるまでの間、

  ただ押し黙って肉を食べ続けていました。


  私は、右隣の方々が今、無言で肉の塊を食べ続けているのは

  肉を沢山食べることで 人生を謳歌しているのだなと思いました。

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