泥沼音遊び(その2)
純セレブスピーカー4号機の製作 |
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製作 2019年1月27日
[前書き]
純セレブスピーカーは、安冨歩先生と片岡祐介先生が考案し、
開発しているスピーカーです。
スピーカーユニットを段ボール箱に付け、箱の中を紙くずで満たす
特徴があります。
両先生が開発しているほか、純セレブスピーカー愛好者の皆様が
いろいろなスピーカーを開発して楽しんでいます。
[経緯]
先月、紆余曲折の末、
1号機よりも3センチ大きいだけの2号機ができました。
2号機の音質には心から満足しています。
2号機は小さくて無駄がなく予算1000円で作れるので
ミニマルな生き方にも合うものだと思います。
もし天変地異が起きて全財産を失い裸一貫になったとしたら
真っ先に2号機と同じものを作って音を聴き
浮世のツラさを乗り切りたいと思います。
しかし実際の私はミニマルな生き方など到底できない煩悩の塊であり
断捨離は遠い国の話で、家はモノで溢れかえっております。
2号機の音質の良さに、機嫌をよくして欲が出て
8センチユニットならもっと低音域の下限を伸ばせると思い
4号機を作ることにしました。
[検討]
純セレブスピーカーは密閉型のようで密閉型ではない、
開放型のようで開放型でもないスピーカーです。
よくある普通の木箱の密閉型スピーカーの箱の大きさを、
ちょうど良い大きさにするとこのグラフの赤線のような特性になります。
そこで同じユニットのまま箱を大きくしていくと
次第に青線のような特性になり
低音域の下限が伸び、中音が減少します。
木箱の密閉型としてはちょうど良い大きさの箱と同じ大きさの箱を
段ボール紙等で作って純セレブスピーカーにすると、
振動板の前面からの直接音と、箱から発散する音とが干渉した結果
青線のような特性になる…ような気がしています。
高音は段ボールを通過しにくいため主にユニットの直接音が聞こえ、
中音が盛大に鳴り、低音域の下限は変わらない印象です。
直接音と間接音の干渉結果である耳に聞こえてくる音の
音域バランスを良くするため、
密閉型のルールよりも箱を大きくしていきます。
1〜3号機の製作の経験から得たものを表にしました。
純セレブスピーカーを小さい箱で作ると中音が盛大に鳴って困り、
紙くずを大量に詰めると中音はおさまるものの低音も失われ
パンパンに詰めると次第に木箱の密閉型の音質に近付きます。
(2-1号機で経験した失敗です)
大きい箱に、非常に緩く紙くずを満たすと良いと思います。
2号機が偶然、直径5センチのユニットで
(ダイソー300円USBミニスピーカーのユニット)
箱が一辺15センチの立方体になりました。
1号機と比べて3センチ大きくなっただけで
俄然音域のバランスが良くなった経験から
なんとなく
一辺がユニットの直径の3倍の長さの立方体か、
同等の体積の直方体や球体
に付ければバランスが取れるんじゃないかと思いました。
純セレブスピーカーの「ユニット直径3倍の法則」の仮説
と名付けました。(以下、法則と略)
4号機を作る前に、箱の大きさをテストしました。
家に転がっていた箱3種に穴を開けて試聴しました。
すべて厚さ2ミリ、1重波の段ボールです。
今回使うFOSTEX FF85Kが直径8センチなので、法則通りなら
一辺が24センチの立方体の体積(13.8リットル)と同等のとき
音域のバランスが良いはずです。
@の箱は中音が盛大になって詰まった感じがありました。
紙くずの量では調整できない位の盛大さでした。
Aの箱は中音がやや強調された音でした。
もしモノラルスピーカーを作って唄物を聴くならAも捨てがたいです。
中音の強さによって歌手が前に立ち楽器が後ろにあるように錯覚できる
ような音でした。紙くずの量である程度調整可能な気がしました。
Bの箱が、一辺24センチの立方体とほぼ同じ体積の箱です。
予想通りBの箱が音域のバランスが良かったです。
この3種の箱には紙くずを入れていないのですが、
Bはこのまま完成としてしまっても良いくらいのバランスの良さでした。
(勿論、気柱共鳴を避けるために紙くずを緩く満たす必要があります。)
この試験結果には、失望し落胆しました。
つまり純セレブスピーカーを、私好みの音質に仕立てるには
法則に沿ってユニットの直径の3倍の立方体を用意すればよく
4号機は8センチなので一辺が24センチで良いし、
10センチなら一辺30センチ、12センチなら一辺36センチの箱を
闇雲に用意して穴を開け、紙くずを最低限の量入れて鳴らしてみて
例えば高音が控えめなユニットであれば相対的に中低音が目立つはずで
その時は紙くずを追加すれば完成しそうでした。
まだ4号機を作ってもないのに試作の時点で結果が判ってしまい
4号機を作る意味があるのか分からなくなってしまいました。
法則の検証の意味で4号機をこれから作るのですが
完成した時の感激とか意外性がなくなったため作る気力が出ませんでした。
なんとか作ったとしても、この4号機が
私の作る純セレブスピーカーの最後になる予感がありました。
最後とは言っても、
私は純セレブスピーカーを自宅から撤去する考えは全くありません。
経年劣化でユニットのエッジが破れてきたり
スピーカーに(うっかり)バケツ一杯の水を掛けたりして壊れたら
即座に5号機の製作に取り掛かりますし
急に新ネタを思いついたり知ったりしたら
舌の根の乾かぬ内に5号機を作り始めるに違いないのです。
最後になる感じがまったくしませんが
4号機が最後だ、最後になっても構わないように
ここで何か頑張った感を醸し出しておく必要を感じました。
頑張った感、やり切った感を出すため(と音質向上のため)に
球体を志向しました。
一辺24センチの立方体が13.8リットルです。
同じ体積の球体なら、直径30センチになります。
私は直径30センチのカップ麺(の容器)をいまだ見たことが無いし
打ち上げ花火の尺玉用の紙球なら30センチはありそうですが
花火師の知り合いは居ないし
第一フェイスブック自体、塩漬け状態で活用しておりません。
30センチの球体を探しもしないで
段ボールの多面体で、球体に準じた音質を得ることにしました。
私は以前、ツイッターでAsileShokudo様の製作した
正12面体スピーカーの写真を見たことがありました。
そこで私は少し変えて正20面体にしました。
正20面体なら、正12面体とは違って
ひたすら三角形を描けばよかったので作るのが簡単そうに見えたからです。
とはいえ正20面体には既視感があり、新しさとかは全くないです。
[製作]
結果は作る前から目に見えているし、多面体は作るのが面倒くさいしで
面倒だ、最後だ、でも面倒だ
っていう思いの繰り返しで、作っている間、とにかくつらかったです。
製作の様子は割愛します。
私の書いた純セレブスピーカーの製作記事に
どこの国かは言えませんが、何事にも起源を主張し始める事で知られる
あの国からのアクセスが頻繁にあります。
純セレブスピーカーは日本の安冨先生と片岡先生が考案した事は
疑いようがない事実ですが、
いつのまにやら某国が、純セレブスピーカーの起源を主張し始めたら
やだなと思って、具体的な製作方法は載せないことにしました。
今は日本にも(ティラミスヒーロー事件みたいな)恥知らずな事をする人も
居るので「純セレブ」という言葉を登録商標にしておいたほうが良いので
はないかと思います。
正多面体は頭の中で考えるには複雑すぎたため設計図を描きました。
精度に関わらない部分では、ありとあらゆる手抜き技を駆使しました。
設計図を作るのに丸4日間、部品を切り出すのに2日間、
組立と仕上げに2日間、計8日間掛かりました。
FOSTEX FF85Kは10年前に買って使っていた遊休品です。
振動板が日焼けして段ボール色になって良い感じです。
高音が強いユニットで、ダイソー300円にも通じる音質の傾向です。
FF85Kは廃番で、後継品のFF85WKを2個買うと1万円近くします。
私は置き場所の制約上8センチが限界で
手元にたまたまユニットがあったので使ったのですが
例えばamazonで検索すれば安価な10cmユニットが選び放題にあるので
置き場所に余裕がある方には10cmユニットがおススメです。
[試聴]
一番苦労して作り、音質的にも私の作ってきた純セレブスピーカーの中で
1番で、ユニットの強い高音に負けない位に中低音が充実しています。
しかしこれは試作時と同様のバランスであり
音が出たときの驚きや感激は全くありませんでした。
想定通りの物が出来ました。
低音域の下限を正弦波再生ソフトで確認しました。
50Hzまではかすかに聞こえ、40Hzではほぼ無音でした。
2号機との差は10Hzでした。
2号機は1000円で2日あれば簡単に出来て
4号機は新品で揃えると1万円を超える材料で8日間掛かって作りました。
それにより10Hzの差と中低音の充実と
球体に準じた自然な雰囲気を得られたのですが
どちらが価格性能比が優れているかと言えば2号機のほうがおススメです。
[後書き]
純セレブスピーカーの「ユニット直径3倍の法則」を唱えて
法則通りに作った4号機で検証しました。
それで想定通りの物が完成してしまって
確かに良いスピーカーは得られたのですが
作って音を出した時の驚きはもう得られなくなってしまいました。
2か月間に渡って純セレブスピーカー製作を連載してきましたが
今回で終わりです。
2018年の冬は純セレブスピーカー製作に没頭した。
そんな思い出作りのような、卒業制作のような。
4号機を末永く大切に使います。
今後は純セレブスピーカーの発展を遠くから見守って過ごし
皆様が忘れたころに帰ってきます。
我が家の純セレブスピーカーの玉座に4号機が座り
2号機の使い道が無くなったのですが
2号機を壊す気には到底なれないため保管します。
思えば2か月前、一般受けを狙って箱にダイソー貼れる布を貼りました。
今では華やかで美しい、多様な純セレブスピーカーが世の中に沢山あり
私のスピーカーは地味で目立たなくなりました。
ダイソー300円ユニットが本家のお墨付きをもらったことは
一番嬉しかったことでした。
昨年末にやり残した4つのネタ
@球体スピーカーのテスト(カップ麺容器)
Aニアフィールドの3号機
B4号機の大きさのテスト
C4号機の製作
すべて終わりました。
春になったら外に出て、自転車を漕いで散歩しようと思っています。
今回、正20面体ということで元ネタ画像を作っておきました。
[注意点]
この記事をご覧の皆様の中には、
私も純セレブスピーカーを作ってみよう!
と思う方がいらっしゃるのではないかと思います。
そのときに、作る上で注意してほしいことがあります。
1.電線ショートによる火災の危険性
スピーカーを使っているときに
ケーブルのプラスの線とマイナスの線が接触すると
ショートした所が一瞬で、やけどするような高温になり
中の紙くずに燃え移って火災になる恐れがあります。
例えば金色や銀色のメタリック折り紙などは
紙の中にアルミ箔が入っています。
そのような電気を通す可能性のある紙くずが
この写真にあるプラス端子とマイナス端子に接触すると
ショートして燃えあがる恐れがあります。
危険ですので、そのような紙くずを中に入れるのはやめてください。
入れる方は居ないとは思いますが
濡れた紙も電気を通すので危険です。
無地の新聞紙やコピー用紙などは、乾いていれば大丈夫です。
2.過大入力による火災の危険性
スピーカーに入力できる電力の大きさは
スピーカーユニット毎に決まっています。
例えばダイソー300円USBミニスピーカーは
箱に3Wx2と書いてあります。
左右それぞれに3ワットまで入力できるという意味です。
3Wを超える音量で使うと
スピーカーユニット内部のコイルが熱を持ち
次第に焦げ臭いにおいがして、やがて発火し火災になります。
3ワットとは一体どれくらいの音量なのか
確認しておく必要があります。
一番簡単な方法は、ダイソー300円USBミニスピーカーを買ってきた
ときに、USB端子を電源(USBアダプターなど)につなぎ
ヘッドホン端子をスマホなどにつないで音楽を再生して
ダイソー300円USBミニスピーカーに内蔵されているアンプの音量を
徐々に上げてみると良いです。
それくらいの音量までは大丈夫です。
安冨先生が、過大入力の危険性について実験をし、結果を公開されました。
ユニットの深刻な温度上昇について(2018.12.08 安冨歩)
上記リンクを開き、必ず読んでください。
ダイソー300円USBミニスピーカー(定格3W)のユニットに
50Wのアンプをつなぎ、音量を最大にして音を鳴らした結果が
掲載されています。
大変な過大入力です。
尚、過大入力の危険性は
ダイソー300円USBミニスピーカーに限った話ではありません。
その他のスピーカユニットや、市販のスピーカーシステムも含めて
メーカーの示した定格入力を超えた音量で使った場合には
同様の危険があります。
スピーカーを楽しむうえで、必須の知識です。
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